部活の帰り道、杏と優はいつもと同じように一緒に下校していた。

「ねえねえ、ゆうにゃん、帰りにあそこでアイスクリーム食べようよー」

杏はいつもと同じように食べ物を提案した。

「杏先輩はいつも食べ物の話ばかりですね」

優は厳しく杏の特徴を指摘する。

「アイス、おいしいよ。それにひんやり...クーラーアイスだよ!」

夏だったこともあり、杏は最後の一言を思いつきで付け足した。クーラーアイスってなんだよ。

「クーラーアイスってなんですか?」

予想通り優が杏のよくわからない造語にツッコミを入れる。

しかし、この日の優は少し緊張している様子だった。まるで次に何があるのか予想しているようだ。

「クーラーアイスっていうのはねえ...クーラーアイスだよ!家につくまでひんやり効果!」

杏は優に抱きつきながらそう言った。

次の瞬間、優はビクッと体を震わせた。

「あれっ、ゆうにゃん、大丈夫?どうかした?」

優の反応がいつもと違うので、杏は心配になって声をかけた。

「だ、大丈夫です、大丈夫です。なんでもありません!」

手をふりふりしながら慌てて優はそう返事をし、少し後ずさる。

客観的に見て、とても大丈夫じゃなさそうだ。

さすがの杏もそれに気付いたようで、少し心配そうな顔になった。楽観的でいつもにニコニコしている杏にしては珍しいことだった。

「...本当に大丈夫?」

じっと優の方を見つめながら杏は優しく声をかける。

二度目の質問に優は大丈夫と返事をしながら「あ、そう言えば今日は用事があったんでした。すみません、今日はもう帰りますね、失礼します」と言ってお辞儀をして急ぎ足で右の道に入っていった。

「んー?」

杏は顔をかしげて優を見送った。

明らかにいつもと様子が違う優に疑問を多少抱きながらも、杏は少し考える様子を見せた後、割とすぐに、目の前にあるアイスクリーム屋の看板に心を奪われていた。

数分後、杏は近くの公園のベンチに座り、満足した様子でアイスクリームを舐めた後、悩み事もなく帰路につくのだった。

一方、杏と別れた優は少し息を弾ませ、後ろを振り向いて誰もいないことを確認していた。そして、ギュッと胸に手を当てる。

一体どうしたのだろう。

その様子は、何かの悩みごとがあるように見えた。

......。

まさか恋の病か何かだろうか。

いやいや、そんなバカな、ありえない。

しかし、意外にも「そんなバカな」が答えだった。

優は次の瞬間、「杏先輩...」と低い声でそうつぶやいた。

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