「杏先輩、杏先輩ー」

あれからというもの、二人だけの時間には優は驚くほど積極的になっていた。

今日も優は杏の腕にしがみついて離さない。いつもならありえない光景だ。

これは昔の杏と優の関係や優の表向きの性格からは考えられないような変化だった。

だから驚くのも無理はない。昔は、先輩である杏が後輩である優に抱きついてかわいがっていた。それを優は振り払って「あまりベタベタしないでください」と言って逃げていたのだから、当然だ。

しかし、今や優にまとわりつかれた杏は真顔で遠くの方をぼんやり見ているだけだったりする。立場が逆転している!

それに気付いたのか優は、少し寂しそうな顔をして、「でも、いつもこうやってくっついてるのも良くないですよね...子供ができても困りますし」とそう言った。

「え、ゆうにゃん、それはどういう...」

杏は少し怯えた表情で優に聞いた。

「もう、杏先輩、二人のときはゆうって呼んでくださいって言ってるじゃないですか」

優はそう言いながら「だって、好きな人とずっと一緒にいると子供ができるじゃないですか」と平然とそう答えたのだった。

「ゆうにゃん...どうやって子供ができるか知ってるよね?」

「いや、だから、好きな人と一緒にいれば子供ってできるんですよね?」

「......」

「えっ、ち、違うんですか?私のお父さんとお母さんはそう言ってたので...私」

「...ゆうにゃん...かわいいねー」

杏は少し不憫そうな顔をした後、すぐ、いつものニコニコした表情に戻り優に抱きついた。

「...!!!」

優は熱のある眼差しで杏の方を見つめると、

「杏先輩、もっと抱きしめてください...大好きです!」

優は幸せそうな表情で杏の腕に埋もれながらそう言ったのだった。

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