「あのー、杏先輩。やっぱりわからないんですが!」

優は、手に持っている分厚い本を読みながら、不安そうな声を出した。

「大丈夫だよー。そのまま進もう!」

向かい合って座っている杏は、優の方を見ずゆっくりとした口調でそう言った。答えになってない!

「いや、本当に、これっぽっちも、全く、わからないんですよ」

優は、何度も問題を読み直したが、さっぱりだった。問題文の意味すら初見では全くわからなかった。

しかし、杏は、相変わらず「大丈夫、大丈夫」と言うだけで、全く何の役にも立たなかった。

そんな感じで優と杏は、また一緒に勉強しているようだ。

杏は、とりあえず問題集をやってみようということで、それしか言わなかった。とてもシンプルだが、あまりに単純すぎるのではないだろうか。優はそう思っていた。

しかも、優は、テキストも教科書も授業もなしの、いわゆる前情報一切なしで手に持った問題集をやっているため、当然ながら問題の意味を含めて、何もかもがわからなかった。

「これ、本当に意味あるんですか?」

しばらくして、優がそうつぶやいた。どうやらお手上げ状態のようである。

すると杏は「答えは見てもいいよー」と言った。

「あ、そうなんですか。良かったです。答えを見ないとできませんよ」

優は、そう言って答えに飛びついた。

しかし、優が答えを先に見ながら問題集をやっていると、杏は「違う違う、一度考えてから答えを見ないと」とチラと優の方を眺めながらそう指摘した。

「えっ、それだと進むの遅くなりますよ」

優は、そう言って反発した。

しかし、杏が言うには、わからなくても一度考えることによって記憶の定着が良くなるし、また、同時に思考力も身に付くので一石二鳥ということらしかった。

優は、「本当にそうなのかなあ」と思いながらも、人それぞれ勉強のやり方は全然違うと実感するのだった。

そして、それには主にモチベーションが重要で、最大効率を考えてやることがモチベーションに繋がる人もいれば、しっかり前情報を把握した上で問題文を解くことによりモチベーションが維持される人もいると思った。自分はどうやら後者のタイプらしい。それがわかっただけでも、優にとっては大きな収穫だった。

そして、その後、優は、杏の勉強法を取り入れつつ、自分のモチベーションに合ったやり方を採用することで、飛躍的に成績を上げることができたのだった。

ちなみに、杏の勉強法と学校の成績はその後もあまり変わりがなかったそうです。そんなわけで、やはり、どんなことでも日々の積み重ねが最も重要なのかも。

おしまい★

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